舞台美術製作のこぼれ話
こんばんは。
皆さんは今年の初のお買い物はなんでしたか?
私はコーナンでペンキを買いました。
今回は『はこづめ』の舞台美術製作とその過程のお話を。
まずは昔話。小学校は図画工作の授業が一番好きで一番の楽しみで、学校だけでは満足出来ずに家の近くの絵画教室に通っていました。お年玉の使い道はレゴブロック。絵よりも立体を製作する方が得意でした。中学校に上がっても美術だけの成績が良くて他は並だったことから、自分にはこの才能はあるかも知れないと勘違いをしていました。
高校一年生の演劇のコンクールで舞台美術を担当しました。美術賞を頂いて嬉しかったのですが「それはお前じゃなくて顧問の先生がほとんど作ったものだろ。」と先輩方に冷ややかに言われたり。二年生に上がってもう一度美術を担当した時にも「前田センスないわ」とはっきり言われてそのときに才能は無いのだと挫折しました。
しかし、卒業後のハコボレの一人芝居は自分で作らなければならない。そのときにテーマである『箱』を多用して舞台に置きました。美術というか段ボールを並べて置いただけという簡素な美術でした。
第0回公演『ハコイリ』 舞台美術
会場 心斎橋ウイングフィールド
ハコボレ二年目二人芝居。この時に初めて舞台美術を誰かに任せようと思い、高校演劇部時代の友人で大阪芸大の舞台美術の道に進んだという高橋可奈に声を掛けました。この時も「箱」のイメージを捨てきれず、簡素なものにしたいという私の要望を叶えてくれました。しかし彼女の本職は舞台衣装だったと言うことを公演後に知り、今ではハコボレの公演を支えてくれています。
第一回公演『ハコがまゑ』 舞台美術
会場 インディペンデントシアター1ST
お待たせしました今回のお話。
三年目の三人芝居。廃材で組み立てたドラム。壊れたアンテナ。ロケット。荒廃した屑鉄の星。その言葉とイメージする絵からは、もう「箱」を並べるだけでは伝わらない。そう決断して製作に取り掛かりました。 最初に始めたのが廃材集め。去年の台風の影響でそれぞれの家の前にはアンテナや電化製品が積まれていることが多かったので家主に事情を話して拝借しました。物乞いです。随分と怪訝な顔をされました。私は鉄工所で勤務していた時期があり、職場を頼って使えそうなスイッチをもらったり、共演者の鈴木君の実家も工務店であり、不要な部品をたくさんいただきました。
そうして部品が揃うと今度は組み立てです。作業場は前田家のガレージ。本来駐車するはずの車に出て行ってもらって作業を開始しました。
前田ガレージにて
製作物は大小さまざまで。多くの小道具にも悩まされました。廃材を組み合わせた自作ドラムキットに手作りギター。それぞれが実際に音が出なくてはなりません。バスドラムがキャリーケースを改造して。エレキギターをバラバラに分解したり、電気コードを溶接したり。楽器の音質を良くする作業が一番苦戦しました。
他にも部屋の中で窓も開けずにスプレー缶で塗装を続けて頭がぼんやりしたり、衣類を焼いて焦げ目をつけるときに燃え広がって軽くボヤ騒ぎを起こしたりと。トライ&エラーを繰り返して完成したのがこちらです。
第二回公演『はこづめ』 舞台美術
会場 ウイングフィールド
ガレージいっぱいの廃材を無理やり車に詰め込み運搬し、劇場に立て込んで。照明の光が刺した時の感動は忘れられません。センスが無いといわれても、やってきてよかったと思います。自分のみたい絵を観れるこの瞬間に全て救われたように思えます。
東京の劇場は高さや空間が違うので悩む毎日です。
あらたな景色を見るために今日も美術を創ります。
いよいよ本番まで残り10日を切りました。
劇場で立ち上がる美術も楽しみにお待ちください。
チケットのご予約お待ちしております!
前田隆成