ハコボレ日記

演劇企画ハコボレ 前田隆成のこぼれ話

『はこづめ』東京公演を終えて。

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 ええ。長らく通信が途絶えてましたが、再びの交信を試みます。東京公演が終わり一週間が経ちました。公演が終わり、心身ともに疲弊して寝込んでしまうので、ご挨拶が遅くなりました。ようやく活動再開。まずは何より、劇場へお越し頂いたすべてのお客さまに感謝したします。終演後の皆様のお言葉や暖かい拍手に救われました。ボロボロの姿でお会いして心配してくれる声や、脚本へのご指摘。全て受け取りました。優しさも厳しさもすべて頂きました。貴方が観てくれているから、我々は舞台上で生きれるのかも知れません。我々を生かしてくれて感謝します。

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 ただ。今回は初めて生きた心地がしなかった舞台でした。大阪で活動を始めて三年。ハコボレがハイエースに夢と役者と美術を全部積み込んで、深夜高速道路を渡って、東京の王子小劇場へに乗り込んで。大阪で支えてくれた仲間と、東京で出会った照明の佐々木さん。天井が高い舞台を立てこみ、光が美術に反射して。音楽、役者の纏う衣装。全ての歯車が噛み合って『はこづめ』の世界が、求めていた絵が完成した。嬉しかった。客席で観るその絵は本当に美しかった。

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 しかし、全ては上手くいかなかった。美術を建込み、場当たりを終えた後に異変を感じた。体が火照り熱を、声が掠れて上手く出なくなったのだ。劇場という空間には魔物が住んでいる。悔しかった。痛め止めや解熱剤の薬を大量に摂取して副作用で体はフラフラになって。また悪循環を。『はこづめ』この公演を何としてでも成功させたかった。今持てる全てを持ち込んだのに。私のせいで伝えたいことが。声が出ない役者なんて最低だ。自分で本を改定して、音楽の星を声が出ないから落第したという設定に書き換えて。職権濫用もいいところ。絶望に暮れて果てていた私に、初日の本番前に角居が言った「これも何かのお告げだよ。君がマイナスに考えると全部舞台に帰って来るんだ。きっと今の君の声にも意味がある。しっかりしなよ」まっすぐにそう言った。

 そりゃそうだ。ここへきて。声が出ない。それだけで諦めれるわけがない。悔しいも嘆くも全部舞台が終わってからだ。今は最善を尽くすしかないだろ。そう言い聞かせ、決意をして舞台に上がった。許されることではない。プロとしてお金を頂いて観に来ていただいている。体の部品の不具合を晒したまま、それでも立ちたいと。我がままだ。みんなで繋いだ舞台を自分の体調管理の甘さで質を落とした。この悔しさは生涯忘れない。

 声がかすれて、台詞を変えて、役者の二人を振り回して。その中でも芝居は生き物で。芝居中。私が生い立ちと声が出ないこと。「いつも大切な時に声が出ない」と語った後、に片山が「お前のそのしわがれた声も最高にロックだぜ」と言うと岩田が「お前は自分の事を気にし過ぎなんだよ」そんな台詞が自然と出てきたのだ。なんだか泣きそうになった。救われたのだ。しわがれた声での最後のライブシーンの熱。これは本当に生きていると感じれた。あの瞬間が好きなんだ。そう再認識した。

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 全てが終わり、心身をすり減らして。燃え尽きて。燃えカスすら残らない時に、これが最後になるかもしれない。もう作ることは、舞台に立つことは無いだろう。そう思った。しかし未練たらしくも次に繋いでくれた人たちが居る。片山の芝居が良いというお客さんが多数いた事。岩田の声が好きだといってくれた人がいた事。照明が綺麗だ。音楽が良かった。宣伝美術が可愛い。安心できる劇場スタッフさんだった。それぞれに関心を持ってくれる人がいた。誰に頼まれたわけでもない。でも頼まれたいとも思ってしまう。そんな時に、お客様が「次を楽しみにしてる」その言葉が何よりの栄養になる。厳しいお言葉も全部受けて進もうと決めた。私はみんなに恩を返したい。ハコボレに関わることで何としても幸せで誇らしいものにする。そう決めたんだ。演劇の才能の向き不向きなんてわかりはしませんが、それでも離したくない図々しい輩ですね。

 生かされているのです。私ハ。だから応えたい。なんだか語りすぎたのか。掬うように言葉を選んでは縫うように並べて。誰かにこの文字が聞こえているなら幸いです。

 改めまして今回のハコボレ第二回 東京公演『はこづめ』に関わってくれた全ての皆様へ。心より感謝します。

 

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 さて、次の東京公演は来年2020年に5人で向かいます。今年は新たな仲間を見つけたい。 5月と11月に新作を書きます。それに伴い初めての出演者募集をしてみようかと。今後10年共に芝居を創っていく仲間に出会えたら幸いです。

 

お次は四人芝居。その次は五人芝居。

ひと箱にひとりずつ。どうかまた別の箱でお会いできますように

 

記録者 前田隆成

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