出演者募集のこぼれ話
3月31日 平成最後の〇〇なんて使うものかと思ってました前田です。
三月。岩田と二人で落語の稽古を重ねて。13日と14日に第参回落語研究会の本番を迎えて。その次週にハコボレ初めての出演者募集がありまして。同級生たちは卒業生になっていき。出演者の選考をして5月の公演の打ち合わせを進行していく。慌ただしい三月になりましたそして今日、平成最後の交信をしようと思います。
「出演者募集」平たく言えばオーディションなのですが、どうにも横文字の単語を使うのを避けてこちらの名前にしました。オーディションには・起用する際に行う審査・適正を計るテスト・選抜を目的とした試験。などの意味があるそうで。
私も今まで何度も扉を叩き続けてきたオーディション。芸能事務所にも所属できず、俗に言うフリーの俳優です。ですから出演の機会を得るにはまずは自分の嗅覚を頼りに一般公募の情報を集めるしかありませんでした。倉本聰先生の舞台「走る」の舞台では一年間、毎月東京へ通って身体テストを受けて振るいに掛けられて、塚本晋也監督の「斬、」も一般からの募集です。毎回深夜バスで東京へ向かうその道中で自分の不安や怒りを運んで成長させて。それこそ殺意の塊のような者でした。何がなんでも。そんな爪痕を残す。灰汁のような存在だった思います。
私は調子にのっていたのかも知れません。上に書いたことすら美学のように語り、過去の事を凄そうに語り。苦しい想いしてんだから受かるだろうと。あの街へ行く機会が増えて慣れて。大きな仕事ひとつ取れて満足して安心して。行動しなかった自分が嫌になります。そんなつもりはない。なんて嘘です。小さな怠慢が大きく育ちました。
だからでしょうね。結果去年はオーディションに受かった数は0です。
若さや勢い。何がなんでも勝ち取るんだという前のめりの姿勢だけでは勝てない。落ち続けて負けて、ずっと勝てない時期が続いて。まずこの門を突破しなければ我々は舞台に立つことすら叶わない。試合に出場できない。これでは俳優とは名乗れないだろうと。もちろん焦る。そういう意味では出演の場を自分で作るために立ち上げたハコボレに甘えていたのかもしれません。
そんな自分が募集する側になるとは思っても居ませんでした。どうすればいいのか。考えました。オーディションを受けるときは勝ち負けの一面でとらえていたし、勝負だと思っていて。しかし主催する今回は、参加者がどんな人かを知りたい。どんな人が今、何のために「ハコボレ」を訪れてくれるだろう。そのことが一番に気になっていました。ありがたいことに男女年齢問わずたくさんの出会いに恵まれました。一緒にやりたいと言ってくれて参加してくれる。そのことがたまらなく嬉しいものです。
しっかり練習を重ねて臨んだのですが、緊張するものですね。2時間あります。ほぼ舞台の上演時間と同じ長さを皆さんと向き合います。自己紹介を終えて。今まで見た中で一番綺麗だとおもった景色を一分間で発表したり。好きな物を紙に三枚書き、会話をしながら手札を消費していくゲーム。などで緊張をほぐしつつ、皆さんの人柄を知っていきます。その後に今回の4人芝居「はこがみ」の脚本をつかって読み合わせ。じっくり役を変えながら何周も読み合せて、立稽古に移ります。その頃には緊張も無くなり楽しくて、私も一緒に稽古に入って。皆さんと掛け合いました。
そして最後に皆さんと面談を行いました。なぜ芝居を始めたのか。今もっている自分の悩み。今後どうしていきたいか。それぞれ過去、現在、未来についての三点。それぞれ三つを語るときの目線が違う事が興味深いです。悩みを聞いているときは、カウンセリングのような空間になってしまいました。
今回の出演者募集を通して、一緒にしたい芝居を創りたい人ってどんな人なのか。向き合ってくれる姿勢。その人の芝居への温度や人柄。主催者側がどんな人を求めているのか客観的に確認することができました。今後のオーディションの参考にさせてもらいます。
ハコボレの出演者募集に参加してくれた皆さま本当にありがとうございました。一人一人と向き合って最後まで悩んだ末に決定しました。今回ご一緒できなかった人も、今後の11月公演の「はこしき」やハコボレが企画していく活動の際にご一考させて頂きます。重ねてではありますが、ハコボレに興味を持ってくれたことを何より嬉しく思います。この出会いに深く感謝し今後も進みます。
5月公演「はこがみ」には大形駿也さんと、シンドウミチルさんの二人が出演します。そこに岩田光風と私前田隆成が加わっての4人芝居です。これからたくさんの製作が積み重なっておりますが、一層気を引き締めて。平成最後の交信を終えます。
そしてなんと「はこがみ」のチケットの発売は明日の10:00よりです。
新元号と共に発売です。有難いのかは分かりませんが、お早いお求めは我々の活力になり有難い限りです。今回は初の試みで朝11時の席の用意も御座います。
どうぞハコボレをご贔屓に。
劇場でお会いできることを心より楽しみにしています。
そして明日には別の企画が告知できるかと思います。
前田隆成