ハコボレ日記

演劇企画ハコボレ 前田隆成のこぼれ話

片山直樹の退団につきまして。

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 本日2月9日をもちましてハコボレ所属の片山直樹が退団いたします。

 

去年の11月に第四回公演『はこしき』が無事に終わって。同月に帝塚山大学で彼と二人芝居を行う仕込みの日。彼の口から退団の意思の相談を受けました。本番前日に辞めることを口にするのは大変だったと思います。そこしかなかったくらいに追い詰めていたのかもしれません。

 

 私は驚きも、怒りも、悲しみさえなく。辞めることを告げた後の彼の言葉を聞いていました。彼は「金銭面や精神面的にも、劇団員としての責任が持てない。俳優だけに集中したい」そのような言葉をくれました。そのときにいろんな思いが沸き上がって。虚しくなりました。

 

 何をもって良い俳優なのかは知りませんが。彼は高校演劇のスターで。演劇大会の大きな舞台でのびのび芝居をする彼に魅了されました。高校卒業後に一緒に演劇をやろうと声をかけたのも私です。ハコボレの旗揚げ公演は二人芝居を片山直樹とする予定でした。それも叶わず、結果的に一人芝居になったのが第0回公演『ハコイリ』。

 その後も執拗に声をかけて、次の『ハコがまゑ』公演は「声の出演」で助けてもらい、ようやく共演がかなった三人芝居『はこづめ』ドラムを叩くモヒカン姿の片山の芝居が良かったと。たくさんのお声をいただき、それが自分のことのように嬉しかったし、同時に悔しかった。一緒にハイエースに美術をすべて詰め込んで乗り込んだ初の東京公演。大阪で行った『はこづめ』は東京の方にも評価され、やはりモヒカンの彼が良い。そんな声でいっぱいでした。その公演が終わりようやく2019年にハコボレの劇団員になってくれました、

 

 思えば、その頃から無理をさせ続けたのかもしれません。東京公演後もすぐに次の公演の準備や、片山にワークショップを企画させようとしたり。そのワークショップに参加したのが、現ハコボレの俳優、大形駿也ひとりだったりとか。彼の自尊心をたくさん削ってしまったため、入団して早々に5月の公演を降板することになりました。そしてリハビリを兼ねて、夏に『落語から演劇へ』の三人芝居を終えて。前回公演、2019年11月の『はこしき』。劇団員としての期間は約1年と短かったけれど、それ以前からずっと一緒に演劇を作ってきた仲間であり、ライバルであり、相方でした。来年は、こんな作品をしようと私が作品の構想について語ると、彼は笑って面白そうやな。ええやんええやんと。一緒に企みました。あの時笑いあったのは嘘でないと思います。

「俺は俳優片山直樹の魅力を引き出す脚本を書くから。これからもよろしく」そんな言葉を恥ずかしげもなく本人に言っていました。彼にはどう映っていたのでしょうか。もっと彼に未来を見せれたら結果は違ったのだろうか、とか。ずっと考えてました。本気でこれからも一緒に演劇を続けたかったです。しかし時間が経って、私の言葉が重荷になっていたのだなとようやく思えました。

 

これから彼は自由になります。これまで以上に、彼が求めた自由です。

もしこれを読まれている演劇関係者の方がいるならば。お願い申し上げます。

片山直樹は本当に魅力ある俳優です。彼にどうか舞台の光を与えてください。

 

最後に直樹が見てるなら。

 

これまで一緒にハコボレを作ってくれてありがとう。

あんたはいい俳優なんだよ。間違いないから。

求めた自由にはたくさんの試練があると思うけど、

どうか、まっすぐまっすぐ進んでほしい。

 

もしも、俳優を辞めてしまいたくなったら、声をかけてくれ。その時にあんたに宛てた最高の舞台を用意するから。俺も死ぬ気で作品を作りつづけます。お互いに成長して、またハコボレで出会える日を楽しみにしています。

 

前田隆成

 

 

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